あすなこ白書

日本のドラマっておもしろい!

勘違いオジさんのドラマ『デザイナー渋井直人の休日』がおもしろい

脚本が良い、役者の芝居がうまい、続きが気になる。

 

ドラマの良さを語るための言葉は山ほどある。でも、このドラマの面白さを伝えるためには、何を使えばいいのだろう。どれも当てはまるようで当てはまらない。何が面白いのかはわからないけれど、めちゃくちゃ面白い作品がテレ東の夜に潜んでいる。

 

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木ドラ25「デザイナー 渋井直人の休日」:テレビ東京

 

意識高いオジさんが返り討ちに合うドラマ

 

勘違いオジさんの名前は渋井直人。本やCDジャケットなど、あらゆるデザインを手掛ける“おしゃれ”デザイナーだ。休日にはレコード店やおしゃれなカフェを訪れ、自由な時間を満喫する。周囲の人は渋井直人のことを「こだわりの人」と呼んだ。

しかし、私は意識が高いベテランデザイナーの話がしたいわけではない。痛いオジさんの話をしたいのだ。

 

仕事は軌道に乗った渋井だが、恋愛はまだまだ。地位もあり見た目も洒落ている意識の高い彼を、周りが放っておくわけがなかった。

 

「ムサビの女子大生、渋井さんとヤりたいって言ってましたよ」

 

「この子ね、渋井さんのこと本当に好きなんですよ」

 

「あの子、共演者なら誰とでもヤるらしいっスよ」

 

「いやいや、そんなことないって(笑)」と言いつつも、渋井はいちいち心躍らせてしまう。そんなこともあるかもしれないがそんなことは絶対ないのに、渋井はいちいち胸をときめかしてしまうのだ。フタを開けてみれば、カフェの店主(池松壮亮)がボソッと言った“ムサビの女子大生”こと川栄李奈は、渋井の名前を覚えてすらいなかったし、ゆとりアシスタント(岡山天音)曰く“誰とでもやるシンガーソングライター”の池田エライザは、ライブの打ち上げにすら呼んでくれなかった。

「あーーーーっ」と自分の勘違いに身悶える渋井の姿を見て、唇の隙間からフフフと声が漏れる。ああもう、だからやめとけって言ったのに(画面の前で)。

 

第4話:「渋井直人の名声」

いつも周りに余計なことを吹き込まれて壮大な勘違いをしてしまう渋井だが、第4話では一人で訪れた店が舞台だった。小さな創作料理屋を営む美人女将・山口紗弥加。お通しに出た“カリフラワーのタブレ”という得体の知れないメニューが、店のこなれ感を物語る。心ほぐれる料理に、気さくに話しかけてくる女将。「ついに見つけちゃったかも……!」と得体の知れない料理に舌鼓を打ちながら、またもや渋井は心を躍らせていた。

 

つい先日受けたインタビューで「休日は、デザイナー渋井直人を休む」とドヤ顔で語っていたにも関わらず、自分の仕事をさりげなくアピールする渋井。これから更に距離を詰めようとしたその矢先、THE業界人風の男with美人モデルが現れる。ただの常連客だと思ったその男、実は日本NO.1デザイナー、ルカニ可児(村上淳)だったのだ。

 

ジェラシーを擽られる存在を目の前に早々と店を去ろうとした渋井だが、なんとルカニの方から声を掛けられる。前々からイケ好かない奴だと思っていたが、あの、あのルカニ可児が、自分の存在を知っていてくれた……!ルカニとの格の違いを痛感するものの、彼の仕事の流儀に感銘を受ける渋井。思わぬ形で出会ったソウルメイトと楽しい夜を共にした。

帰り際に、渋井は美人女将から紙袋を渡される。

 

「これ、パパっと作ったからたいしたものじゃないんだけど、お夜食。

これ食べてお仕事頑張って。風邪ひかないでね」

 

一人での帰り道、紙袋の紐をぎゅっと握りしめた渋井は何とも言えない表情を浮かべていた。このシーンを背景に、渋井の心の声が入る。

 

『二人きりだったら、きっと抱きしめていたことだろう』

 


ノローグを聞いた瞬間、私は声をあげて笑った。もう我慢できなかった。

ちなみに第4話のオチはルカニ可児と美人女将が実は恋人同士だった”というもの。店前で寄り添う二人を見て、渋井は固く心に誓うのだった。「もうあの店にはいかない」と。あーーーもうまたやっちゃった、あーーーーーもうだからやめとけって言ったのに(画面の前で)。

 

結局『デザイナー・渋井直人の休日』の何が面白いのか

 

意識高いデザイナー・渋井直人が美女と出会い、勘違いして、コテンパンにやられる。

 

人の不幸見て楽しむ作品だと言われれば、その作品を好きな私はすごく意地が悪い人間のように聞こえるが、たぶん意地が悪い人間なのだろう。「この人、痛い目みればいいのに!」と思ういじわるな私の小さな欲を、そっと満たしてくれる存在、それが渋井直人だ。

だから言ったのに。いつになれば学ぶんだ。このドラマを見る度にそう思うけれど、渋井直人には懲りずに勘違いしつづけてほしいし、いつまでもトホホと肩を落として帰ってほしい。

 

この面白さを、なんと伝えよう。

 

脚本が良い、内容が面白い、光石研も周りも芝居が素晴らしい、演出がいい。

 

どれも当てはまるけれど、これらの言葉だけでは収まりきらない。今作の良さを表す言葉が、もっと、もっと、他にあるはずだ。しかし、ドラマが終わる来月までに到底思いつきそうもない。とりあえずテレビ東京大先生には『孤独のグルメ』のように渋井直人のシリーズ化を希望する。第3シーズンを放送するくらいには、私のボキャブラリーも今よりは確実に増えているはずだ。

 

 

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