あすなこ白書

日本のドラマっておもしろい!

昔も今も、これからの私も好きになる 映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』感想

私はギリギリ平成生まれだ。自分が高校生の頃「ギャル文化」は若干廃れていたし、ルーズソックスも既に過去の遺物だった。田舎の女子高だったので、奇抜な格好をする同級生は特にいなかったけど「派手な子」はいた。近くに好きな男の子がいるわけでもないし、高確率で見張りの先生がいるから学校帰りに遊びに行くこともない。何よりも先生に怒られてまでオシャレなんてするもんじゃないよなぁ、と派手な子たちが注意される度にそう思っていた。

 

sunny-movie.jp

私の高校時代より5~10歳上の方々にドンピシャであろうこの作品。物語は安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES 」から始まる。

 

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何不自由ない暮らしをしている専業主婦の奈美(篠原涼子)は、いつも通り家族と朝食をとっていた。テレビでは安室奈美恵のニュースが流れていた。奈美は勿論、あの頃の女子高生はみんな安室ちゃんに憧れていた時代。奈美は過去の映像を見ながら、ふと自分の高校時代を懐かしんでいた。
ある日、怪我をした母のお見舞いに行くと別の病室から奇声が聞こえる。部屋を覗いてみると、医師や看護師に押さえつけられている女性の姿。病室の名札には見覚えがあった。奈美の高校時代の同級生・芹香(板谷由夏)が入院していたのだ。
芹香はグループのリーダー的存在で、現在は複数の会社を経営する女社長になっていた。しかし彼女は末期の癌で、余命もわずかだと言う。

 

「最後にSUNNYの皆に会いたい」

 

芹香の最後の願いを叶えるべく、奈美は高校時代の仲間・SUNNYのメンバーを集めることに奔走する。

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韓国のリメイク作品だが、今作では90年代の日本が大きなテーマになっている。私のようにドンピシャではない世代の人も大丈夫。「90年代とかあんまり知らないんですけど…」というヤングたちも、久保田利伸LA・LA・LA LOVE SONGに乗って90年代の世界へと一気に連れていかれるから無問題。

しかし今をときめきまくっている広瀬すずを始め、メインキャストのJK時代を演じる女優は皆二十歳そこそこ。何なら渡辺直美のJK時代を演じた富田望生は18歳なので生まれてすらいない。でもスクリーンの中には、確かに「90年代版」の広瀬すず山本舞香が存在していた。ルーズソックスに憧れるもすぐに買えないからと自分のソックスを伸ばしてはく広瀬すず、細眉に少し焼けた肌の山本舞香。彼女たちだけではなく、街の雰囲気も流れる音楽もロン毛姿が妙にやらしい三浦春馬も、出てくる人・モノ全てがMADE IN 90年代なのだ。

 

90年代のギャル達は無敵だった。援助交際を持ち掛けるリーマンを返り討ちにしたり、時にはテレクラで小遣い稼ぎをしたりとギリギリな事をする割に、自分達が「ダサい」と思うことには一切手を出さねぇ!という強いポリシーがあった。「良い・悪い」ではなく「カッケェ・ダセェ」で物事の善悪を決める姿は非常にクールだと思う。

山本舞香演じるJK時代の芹香がまさに生粋のギャルで、これまたはちゃめちゃにカッケェのだカースト表のあの三角のほぼ頂点にいる存在なのにも関わらず、気さくで仲間思い。田舎から転校してきた奈美(広瀬すず)を自分のグループに誘ったのも芹香である。チアダンで山本舞香のことを気になった方は、ほぼ100%の確率でSUNNYの山本舞香を好きになる、と言うか好きにならざるを得ない。

その芹香の対極にいるのが、池田エライザ演じる奈々。ギャルのバイブル雑誌「egg」のモデルで(eggという名前が懐かしすぎて涙出る)どこかミステリアスな存在だ。奈々は90年代のギャル、というよりギャルの格好をした池田エライザなのだけど画面に映るエライザがいちいち美しかった。いつ何時の表情を抜かれても、美・美・美!!同級生にいたら絶対お近づきになりたいし、来世人間に生まれてくるなら池田エライザの顔面になりますように、と食い入るようにスクリーンを見た。ちなみに、SUNNYのメンバー探しで最後まで難航するのが奈々。なぜ奈々と連絡が取れなくなってしまったのか、そちらも物語の鍵となる重要なエピソードだ。ついでに言うと、SUNNYのメンバーで一番最初に連絡が取れるのはお察しの通り梅(渡辺直美)である。秒で連絡が取れる。

この二人を始め、JK時代のキャスト達に大人版キャストの面影を何処となく感じるのも面白い。豪華なだけでなく、この個性的なキャストを率いるのが篠原涼子広瀬すずなのも今作のセンスを感じる。ちなみに大人版でいうと、演技では小池栄子に注目しがちだが油断しているとともさかりえに度肝を抜かれる。全力で観客の度肝を抜いてくる。あと鰤谷…大人版関係ないけど鰤谷…!お前は絶対幸せになれ…!

 

大人版・奈美(篠原涼子)はSUNNYのメンバーを集めるにつれ、皆が昔のように必ずしも楽しいだけの人生を送っていないことを知る。そして時間の経過とともに進む、芹香の病い。果たしてSUNNYのメンバー全員で再び集合できるのか。

懐かしさと少しの切なさを感じる90年代の香りと共に、出演しているキャストを更に好きになる作品だった。知っている人はより好きに、知らなかった人も好きになる。予告やキャッチでは「青春と再会する」だの「愛に満ちた青春ムービー」だの、青春が前面にプッシュされがちだが、今作は青春時代の尊さだけでなく年齢を重ねる楽しさも教えてくれる。それはJK時代に負けず劣らず、大人時代のSUNNYのメンバーも最高にパワフルで最高に格好良く描かれているからだと思う。今青春真っただ中の学生は勿論、青春時代を通り過ぎた我々大人にもエールを送ってくれる華やかな作品だ。

  

最初に言った通り、私のJK時代はSUNNYのメンバーのように決してド派手ではなかった。けれど私は私で満足している。

しかしエンドロールが流れる中、小沢健二の「強い気持ち・強い愛」を聞きながら猛烈に思ったことがある。

 


「SUNNY 強い気持ち・強い愛」全曲メドレーPV

 

私、生まれ変わったらギャルになりたい…っ