あすなこ白書

日本のドラマっておもしろい!

「奥様は取扱い注意」がなぜ人気なのか、真剣に考えてみた

2017年秋ドラマも始まって一ヶ月が経ち、各ドラマの[色]が見えてきた。「このドラマの為に一週間生きている!」みたいな作品もあれば、「この時間帯に見るものがないから、何となく見ている」作品も出てきたことだろう。

 

今期ドラマの特徴といえば、「オリジナル脚本が多い」ことだ。

 

月9の「民衆の敵」に始まり、フジテレビは何とプライム帯3つのドラマが全てオリジナル脚本でかなりの気合の入りようを感じるし、TBSも今となっては[こけられない枠]になってしまった火曜22時にクドカン脚本をぶつけてきた。
ドラマ好きにとっては、なんとも贅沢なシーズンなのである。

 

そこで今回気になったのは日本テレビ水曜22時「奥様は、取扱い注意」

 

主演は日テレ水曜枠にゆかりある綾瀬はるか(ホタルノヒカリ、今日会社休みます)。今季ドラマの中では鉄板の「ドクターX」、TBS大本命の「陸王」に続く高視聴率作品となった。

 

内容としては、施設育ちの菜美(綾瀬はるか)は幼少の頃からずば抜けた身体能力を持ち、ひょんなことから某国の工作員として暗躍していた。スリルがある毎日を過ごす反面、穏やかな家庭生活に憧れた菜美は、工作員としての自分を殺し日本へ帰国した後パーティーで出会った伊佐山勇輝(西島秀俊)と結婚する。高級住宅街で昼はママ友(広末涼子・本田翼)たちと習い事をしたりと穏やかに暮らす彼女だが、その「愛すべき町」に度々事件が起こる。平穏な生活にも少し飽きてきた菜美は、今度はその街を、そして困っている住人(主に主婦)を救うために動き始めた。簡単に言うと「暇を持て余した仲良し主婦三人が町で起こった事件を解決する」という話で、普段は可愛らしい奥様が夜は違う意味でスゴイというギャップを楽しむというコンセプトのようだ。

 

しかし毎週見ていて毎回私は疑問に思う。

 

「なぜこのドラマがこんなにも好調なのだろうか」


端的に言うと「このドラマ、そんなにおもしろいか…?」ということだ。

 

確かに一話完結で見やすいが、私の中では既に「とりあえず使命感で見る枠」になってしまった。

毎回菜美の過去の自分を語るモノローグから始まり、いつも肝心なところで「それはまた別の話」とはぐらかされるのだが、話のキーになるであろう彼女の過去もそんなに気にならなくなってきた。西島さん演じる夫は明らかにタダモノじゃない感が最初から出ているが、何というかその曖昧な立ち位置にもやっとする。キャストは魅力的で、綾瀬はるかも広末も本田翼も可愛いし西島さんもイケメンだ。ああイケメンだとも。

しかし、「地味スゴ」の石原さとみのように毎週服装が楽しみだとか、「カホコ」の竹内涼真演じた麦野君のように視聴者を釘付けにするキャラクターもジャニーズもいない。にも関わらず、なぜ人気なのか真剣に考えてみた。

 

①前枠からの信頼

 

「なぜこんなに人気」と思った枠は前シーズンにもあった。TBS火曜22時の「カンナさーん」である。コミックスからの実写化なのでストーリーは無難といっちゃ無難だったが、深夜枠でも放送できそうな手軽さがあり、そんなに心ひかれる展開もなく、はたまた今をときめく若手イケメン俳優を起用しているわけでもなかった。

恐らくTBS的にも「ちょっと一息」的な気持ちで挑んだ作品のような気がするし、本当にそのモチベーションで作ったならば結果的に万々歳の「コスパがいい作品」だったはずだ。
「カンナさーん」がなぜ安定して数字を出す作品になったかと考えたとき、私個人としては「『カルテット』『あなたのことはそれほど』から見てきた視聴者がそのまま『カンナさーん』を見ていたのではないか」という結論に達した。


今回の「奥様」で置き換えてみると、前作は麦野くんフィーバーを起こした「過保護のカホコ」だ。(ちなみに「カホコ」もなぜ人気なのだと考えたことがあり、その時の結論は「みんな麦野君がすき」に行きついた。)やはり前シーズンの作品が安定して人気があると、その影響が次作にも少し反映される気がするのだ。
その法則でいうと「監獄のお姫さま」は?と思われる方もいるかもしれないが、あれはもう「一般受けするには癖が強いんじゃ…!」と私の中の千鳥ノブが叫んでいる。

ではでは「民衆の敵」は?というと、初回放送が他作品より遅く、また野球延長の為かなり遅れたというのが視聴率が低い一つの理由だと思う。

その点でいうと「奥様」ならびに日テレ水曜22時枠は、比較的いつも他局より初回放送が早く「新しいドラマ始まるらしいから見てみるか」というライト視聴者を掴みやすいのだ。

話は逸れるが面白いかどうかはさておき、「民衆の敵」にかけるフジテレビの情熱は好きだ。前作コードブルーでかつての月9の勢いを取り戻し、負けられない今作に安定の篠原涼子を主役に掲げ、他局でフィーバーを起こした高橋一生石田ゆり子を起用するというミーハーな感じ、貪欲な姿勢が好きだ…!
なのでどうにか報われてほしいが、制作陣で方向性を再度話しあったほうがいいとは思う。

 

②可もなく不可もない内容

 

あえて箇条書きにすることでもないというのは百も承知だが、「奥様」の場合はこれが功を奏している。
個人的には重い内容のドラマ(今期でいう「明日の約束」みたいなジャンル)やそれとは打って変わってチープなラブコメが好きなのだが、世間では「力を抜いて見れるドラマ」が好きな人や「何もないから見る」人もいる。今回の「奥様」はその枠の方々にぴったりとはまるのだ。
水曜22時枠でいうと以前あった「母になる」は、主演のエリカ様筆頭にキャストのお芝居も見事で、毎週考えせられる内容に三週に一度は泣かされた。しかし私みたいに好きな人もいれば「話が重たい」「シリアスすぎる」と避ける人も勿論いて全体視聴率は9.2%とあの枠にしては振るわず、まさに賛否両論な作品だった。一話完結ではなかったので、いきなり見ると話が分からないという点も視聴率に繋がらなかった理由だろう。(最近知ったのだが、ドラマを毎週欠かさず見たり見れなかったから追っかけ再生したりと、私のように一般の人は暇ではないらしい)話が作り込まれている続きものは、いかにして最初の視聴者の興味を持続させるかが重要であり、最初から見ていた視聴者こそが数字を左右しているのだ。
そう考えてみるとテレビ離れが嘆かれる昨今、「続き物」よりは「いつみても何となく話がわかる一話完結」で「賛否両論あるテーマ」よりは「何となく楽しめる作品」の方が視聴率に反映しやすいのかもしれない。

 

話は色々なところに飛んだ挙句、こんな大層に書くものではなかったと思うが書いてみると疑問に思っていた点は解決した。
でも仮に「前枠からの信頼感があり、スタートダッシュが成功した」作品が内容に関係なく安定した視聴率に繋がるのだとしたら、ドラマ界も中々世知辛い。第一印象が良くないとその後どれだけ良くても伸びないだなんて、まるで我々人間社会と同じやないか…!
「カルテット」のように最初ボチボチでも、ネットやTwitterで話題になり最終回直前で奇跡の二桁を出す!なんていうのは、本当にまれな例なのだ。
かくいう私も、毎回リアルタイムで視聴できてもCMを飛ばしたいが為に録画をするので、視聴率には全く貢献できていない。
なのでせめて、あの小さいアカウントから誰が見るというわけでもないが、好きなドラマの良さをひたすら呟いていこうと思っているし、そのつもりであのアカウントを作った。

 

とは言えど「奥様」について内容は全く褒めてはいないが、それでもある一定の層には評価され今のニーズにあっているからこそ数字が出るのだから、日テレ的には当たった作品なのだろう。
まさかの玉鉄も投入され殺人事件も起こってしまった以上、次に起こるのは爆破テロとかレベルの規模じゃないともう何も驚かなくなってしまうのではないかと思うが、今後も「ふわっと」期待しながら最後まで見届けることにする。

今期は「僕たちがやりました」が兎に角スゴイ

気がつけば9月に入り、涼しくなってきた今日この頃。2017年夏ドラマも終盤に差し掛かり、中には最終回を迎えたドラマもある。

 

思えば夏ドラマに関しては、前期よりも期待度が個人的に高かった。その理由は何てったって月曜9時の「コードブルー」。フジテレビの月9がパッとするかパッとしないかでその期のドラマ全体のカラーが決まると思っているので、久しぶりに「これぞ月9だ!」と見せつけてくれるような作品だと期待していた。
蓋を開けてみると、コードブルー筆頭に朝ドラコンビの「過保護のカホコ」そして意外にも「カンナさーん!」がそこそこの視聴率を出していたことに驚いた(シリーズものは見ていないので刑事7人の方が視聴率いいというツッコミは心の中に閉まっていただきたい)


後述するかもしれないが、私は遊川和彦作品に対して少しトラウマがあるので、カホコに関しては最後まで気を抜かずに視聴しようと決めていたが竹内くんの麦野くんは最高of最高だし、終わってしまったが金曜23時枠の「あいの結婚相談所」は育三郎が歌う主題歌を口ずさむくらいハマっていた。その後のテレ東枠「下北沢ダイハード」もアングラな世界観が面白いし、「ハロー張りネズミ」のゆるい感じも「ウチの夫は仕事ができない」のチープさも好きだ(褒めてる)

しかし!!

 

最終回まで残りわずかなこの時期に改めてオススメしたいのは、

なんといっても

 

フジテレビ火曜21時の「僕たちがやりました


永遠の童顔・窪田正孝が高校生を演じることが話題になった青年漫画(完結済み)の実写版である。原作をチラッと見ただけなので原作ファンからしたら言いたいこともあるとは思う…あるとは思うのですが!!


一ドラマ作品としては、かなり、かなりクオリティが高い!!(語彙力)作品の世界観、展開の仕方、そしてキャスティングセンス…!「僕たちがやりました」「ネタバレ」とggってしまったら安易に結末はわかってしまうのだろうが、それをグッとこらえて次週を待ちわびている自分が毎週テレビの前にいる。

 

話としては、凡下高に通うトビオ、伊佐美、パイセンが虐めにあった仲間・マルの復讐の為に、4人で向かいの矢波高に小さな爆弾をかける。計画ではビビらす程度の小さなものだったが、手違いで大爆発が起こり大勢の死傷者が出てしまう。四人は自分たちの「普通」「平凡」を守る為、逃亡生活を送ることになる。

こう書くと、そんな上手くいくんかいというツッコミどころ満載だが、それがまあまあ上手くいくのだ。


なぜかというと、爆弾事件の犯人の一人・元キンコメの今野演じるパイセンが物凄く役に立つ。超ド級の金持ちで逃亡資金だと200万ずつ渡したり、海外に逃亡しようと企てたり、結果彼の関係者が事件を揉み消ししたり…ピンチだ!!と思った時に必ず札束を持って颯爽と登場するパイセンに心を鷲掴みにされたのはきっと私だけじゃない。

パイセンに比べ、現役高校生三人組は普通でイマドキっぽい。主人公のトビオを始め、皆「平凡」と「そこそこ」を愛し、特別なことは望まない。自分たちが殺人犯で犯罪者なのにも関わらず、ワンチャン助かるかもしれない…!と浮かれたと思えば、一気にマイナス思考になる様子も何となくリアルだ。


中でも矢波高生にリンチにあった張本人・マル(葉山奨之)に注目したい。キノコ頭の彼は一見気弱そうに見えるが、事件を経たことで図太く進化。逃亡金200万で何をするかと思えば贅沢を極め、挙げ句の果てキャバ嬢に貢いで金がなくなり仲間の伊佐美(間宮祥太朗)の金さえ奪おうとするズル賢さを見せる。こいつゲスいな…と思うが、何となくこういう人間がいそうなのが怖いし、リンチされ虐げられて瀕死状態になりながらも生き延びたその結果が、彼の歪んだ部分を生み出したと思うと何とも可哀想である…
また、このマルを演じる葉山くんがとても上手い。逃げ恥にも月9にも、何なら私が大好きな「Nのために」にもいたわ!!と後からWikiを見てとても驚いた。それほどこのマルという役柄が合ってるし、下手したらこのイメージを引っ張ってしまうのでは…と思ったけれど、彼なら次回作にもピタッとフィットすることだろう。今後がとても楽しみな俳優さんの一人だ。

 

男性陣ではトビオ達を追う矢波高生・市橋役の真剣祐にも注目したい。彼こそマルをリンチし、数々の凡下校生を締め上げていた矢波校のトップである。「不良なマッケンもかっこいいよぉ〜>_<」と放送前はのんきに構えていたが、その端正な顔立ちとは裏腹にマジで怖かった。新宿スワン山田孝之並みに怖い。顔も綺麗だから尚更怖い。しかし、そんな彼も爆発事件の被害者で、車椅子生活になってしまう。
当初はトビオ達を犯人だと思い、彼らを追っていたが、ひょんなことからトビオと親友になる。実はトビオの幼馴染・蓮子(永野芽郁)のことが一途に好きだったり、お婆ちゃん子だったりと乙女ゲームの不良みたいなギャップを発揮したりする。
トビオとの男同士の友情は何とも微笑ましいが、、、もうこれ以上い、いえないううううっマッッッケーーーーン!!!!!!!

 

ヒロイン・蓮子を演じる永野芽郁ちゃんも超超可愛いが、毎回視聴者を釘付けにしてるのは何と言っても伊佐美の彼女・今宵を演じる川栄だろう。
クラスにいそうでいない可愛さ、ふわっとしてそうな体、ゆるふわそうな見た目と頭。彼女も現代っ子あるあるな事なかれ主義の子かと思えば、実は肝が据わった一面を見せる。
前クール「フランケンシュタインの恋」で男勝りな女職人を演じていた川栄ちゃんだが、今回みたいなそこらへんにいそうでいないビッチ役を演じさせたら右に出るものはいないんじゃないかと思う。
彼女もまた、どハマりな役だ。

 

「爆発事故を起こした高校生+金持ちのボンボンが巻き起こす逃亡劇」と単純な話かと思えばそうでもない。
トビオたちを様々なピンチが襲うがその度にギリギリのところで助かる。見ているこちら側も「このまま上手くいくんじゃ…?!」と思ってしまうところで、必ず彼らを絶望が襲う。
「はぁ助かった」とフニャッと笑った直後に後頭部をハンマーで殴られ「忘れんなよ」と奈落の底に落とされるような…何が言いたいかというと、幸福から奈落の底に突き落とす、緩急のつけ方がとても上手い。何が言いたいかと前置きしてるくせに語彙力が無いのが恥ずかしい。
トビオ達だけじゃなく、見ているこちら側も油断していたら突き落とされる。だからこそ、来週も見たい次回はどうなるんだ!!とワクワクとハラハラが入り混じったような気持ちに毎度毎度駆られてしまうのだ。


Mrs. GREEN APPLEが歌うOP「WanteD! WanteD!」もトビオ達の焦燥感を表してるかの如くスピード感ある曲で、ドラマの世界観にもぴったりだ。(個人的にサビの「ぼっくらは逃げてーる、自分の弱さから」というバンドマンにありがちな歌詞が大好きです!!!!) 


私も録画組な為、視聴率に貢献できないので偉そうには言えないが、これだけクオリティが高い作品なのに視聴率に反映されないのは見る層を選ぶからだと思う。確かにお母さんとは見づらいし、かと言ってお父さんとも見づらい。

 

しかし今日の放送含め、残すところあと二話。今から見ても楽しめるであろうし、願わくば是非最初から見ていただきたい。少し退屈な火曜日が、ちょっとワクワクする火曜日の夜に変わるはずだ(しかしあと2回で終わる